Re: BANANA FISH by Akimi Yoshida

つい最近アニメが始まり、何かと話題になっていた作品、「BANANA FISH」を読んだ。一話を見て、原作に興味を持った結果、こうしてわざわざはてブロまで新規登録してこのやりきれない気持ちにどうにか整理をつけようとしている。

けど、とんでもなく支離滅裂な走り書きなので、あくまで自分用のメモとして残しておく。書きながら思考転換すると思う。もしこれを読んでいる方がいたら許してほしい。

 

手に取ったのは、ほんの出来心だった。話題になっているから、と、たったそれだけの気持ちだったのだ。友達も読んでるし、と。

漫画が好き、少女漫画もBLも、どんなジャンルでも面白いものは大好き。これだけ話題になっているのになぜ私は今までこの作品を読む機会がなかったのだろうなあ、と不思議に思いながら、日曜日、BOOK WALKERのアカウントで新しく「BANANA FISH」という本棚を作成し、軽い気持ちで全巻を追加した。社会人だからこそ成せる技だと思う。私も大人になったな…としみじみ感じたアラサー女 is 私。

(月に2~3回は往復10時間以上の距離をバスに乗ることがあるということもあり、書籍の購入においては基本的には電子版を選択している。読み終わった今の感情としては、改めて製本版を購入したい気持ちでいっぱい。)

購入したのは復刻版だったので、最終巻の19巻には最終話とともに「ANGEL EYES」および「光の庭」も収録されていた。余談だが、この収録方法は卑怯だと思う。とても、とても卑怯な並べ方だと思う。

 

さて、何から話そうか。何を話そうか。

言いたいことはいっぱいあるはずなのに一切まとまらない。

 

まず、この作品を読んでいてずっと私に付きまとっていた感情のなかで一番強かったものは、「苦しみ」だった。

だって私の住むこの世界には、少なくとも私の視界のなかにはマフィアどころかヤクザだっていない。ストリートギャングなんてものを一番身近に感じたのは、強いて言えば池袋ウエストゲートパークを読んでいたときだ。

日本に住んでいるので、いや、カナダに住んでいたときだって、本物の銃に触れたことは無い。生身の人間同士の殴り合いを、ボクシングの試合以外で見たことだって無い。性被害だって、作品に登場するようなものは経験したことはないし、まわりで不条理に殺された人もいない。ニュースではよく見るけれど。

私の住む世界は、私の人生は、ありがたいことに大変平和なのだ。

だから私はこの作品の終わり方をハッピーエンドと受け取ることはできないのだが、結局それって私のエゴなのだと思っている。アッシュにとっては、たぶんどちらかというとハッピーエンドなのではないかと思う。

 

話はがらっと変わるが、親が金持ちなのは、広義で言う「才能」のひとつだと私は思っている。最近話題になっている某医学部の入試加算に関するニュースを読んで更にそう思った。子供を平和な環境で育て、さらには子供が好きなように人生を歩むための金銭的支援が充分にできる親を持った子供は、運が良い。もうそれだけで才能である。

アッシュの頭脳はまぎれもなく生まれ持ったものだ。体術も、もちろん努力して力を付けた部分もたくさんあるだろうが、少なからず素質があったと思う。だけど彼には親を選ぶことも、産まれてきた環境を選ぶこともできなかった。彼が例えばアッパーイーストサイドの良家に産まれていたら、お坊ちゃまとして育ち、もしその頭脳を発揮する機会があればきっと当たり前のようにハーバードやMITで学んだかもしれない。政治家になったかもしれない、医者かもしれない、研究に没頭してPh.D.まですんなり取得したかもしれない。もちろん良家に生まれていたって、彼の美貌のことだ、ゴルツィネに目をつけられた可能性は十分にあったのだろうけども。まあ、あくまで確率の話。

BANANA FISHにおける彼の家庭環境はお世辞にも良いと言えるものではなかったし、その後の彼を取り巻く環境だって、所謂「平凡」になることはなかった。彼は結局最期まで闇の世界を生き続けた。生き抜いた。

家庭環境がすべてなどと言うつもりは毛頭ない。けれど、アッシュのキャラクターを作りあげたファクターとしては確実に無視できない。

 

だいぶ考えが支離滅裂ではあるけれど、結局何が言いたいかというと、私はやっぱりあのラストが受け入れられないのだ。

 

いや、わかっている、きっとBANANA FISHのなかのアスラン・ジェイド・カーレンリースという人間にとっては、あの死はとても穏やかで優しいものだったのだと思う。銃撃戦で、銃弾一発で簡単に死んでいく人々の屍がそこらじゅうにごろごろしている世界のど真ん中で生き続け、このように穏やかな死を迎えられたことは、彼にとってはたぶんまぎれもない幸せだったのだと思う。英二と出会わなければ知ることも出来なかったかもしれない感情を得て、彼の深い愛情と信頼を感じながら眠りにつけたのだから。

 

でも、じゃあ、なぜ彼はあのとき立ち上がったんだ。彼はどこに向かおうとしたんだ。スキを見せてしまうほどに、なぜ焦って動いたんだ。

書いてて心が苦しい。だって彼は紛れもなく、あそこで死ぬ必要なんてない人間だった。あそこで死ぬつもりだって無い人間だった。

 

少しメタ的な、IFのお話をする。

タイトル通り、もしこの作品がバナナフィッシュの秘密に迫ることをメインとしてクライムサスペンス路線を突っ走っていたとする。そうしたら英二の存在は邪魔者意外の何物でもないのではと思う。英二が居なかったらあそこまで辿り着けたかと考えると、たぶん辿り着けていたと思うし、アッシュ・リンクスは弱点無しのそれこそ大魔王、阿修羅、になっていたかもしれない。そして生き続けたかもしれない。

しかしこれは別冊少女コミック連載作品であり、所謂ブロマンスものでもある(決してボーイズ・ラブではない。ブロマンスだけで成り立った作品でもない。だがただ友情と言うには深すぎるものがあるし、特別すぎるこの関係は、悔しいけれどブロマンスという言葉しか浮かんでこない。陳腐で申し訳ない)。そういった意味では英二の存在は必須のもので、英二はアッシュに人間性を与え、そしてそれはこの作品が愛されるきっかけとなっているのだと思う。

 

ここまで書いていて思った。

私はアッシュに生きていてほしかった。これは間違いない。ラオをあのとき殺しておけばよかった、またはラオがすでに殺されていればと思ってしまった。そもそもアッシュに害を成す人間みんな死ねとすら思った。ごめんなさい。

でも、じゃあ英二のいない世界線でアッシュが生きていたら、と考えたところで、私がいちばん見たいのはたぶんアッシュと英二が日本で過ごす世界なのだ。彼らが穏やかに生きて、お互いとつかず離れずの距離感を保って、そのまま大人になって、やがて年老いて死んでいく世界が欲しかったんだ。彼らに平凡な幸せを、もっともっと、おなかいっぱい感じてほしかったんだ。私の住む世界を感じてほしかったんだ。

 

結局今これを書いていて何を訴えたいかって、

「アッシュに生きていてほしかった」

ただこれだけなんだよな。本当に。英二の手紙にあるように、英二にアッシュの運命を変えてほしかったんだよなあ。

 

アッシュが殺されない世界。

英二が死人に束縛されない世界。

ふたりが穏やかに過ごす世界。

それが存在していてほしかったんだよなあ。

 

私が全巻を通して読んでいて一番泣いてしまったのが、「光の庭」のシンの一言だった。

思い出と戦っても勝ち目はない…か。

この一言でいろんな思いがブワッと広がって心のダムが決壊した*1。うまく言葉にできないけれど、嗚呼、アッシュは本当に死んだのだ、シンはラオの罪とともにこんなにも苦しみを抱え、それでもこの7年間英二の傍を離れずにいたのか、英二がアッシュの亡骸と対面したときどんな表情をしたのだろう。すべてがあのパソコンを通して私の中に流れ込んできた感じ。

 

「光の庭」は上手にまとめられていた。

アッシュの死を決定付けるという、リアタイ読者の気持ちを想像すると苦しくて仕方がなくなるような責任を抱えながらも、英二の時間がとまったのと裏腹にシンや皆が成長し世界が回っていく、そのリアルを描いていた。

 

けれどやはり、入り込みすぎた読者のひとりである私は思うのです。きっとこれからも、この作品のことを考えるたびに思い続けるのです。

アッシュに生きていてほしかった、と。

 

もっといろいろ、感情のままに書き殴りたいけれど最早すでに収集つかない状況なのでとりあえずここらで一旦この感想は閉じる。

最後に一言、IQ3くらいの意見を書いておこう。

久しぶりに、「〇〇に一回抱いてほしい~~~」などと考えずに漫画を読めた!!!!普段抱いて抱いてばかり言ってるから新鮮な気持ちだなあ。

なんて思いながら最後まで読み進めたら「光の庭」のシンに軽率に抱いてほしくなったので本当にごめんなさい。本当にごめんなさい。YASHAを読みたくなりました。この右腕を再び呪いから解放するときが来たか…(購入ボタンをクリック)。

 

 

 

さて、生きていたらアッシュは今年で50歳になる。
永遠のティーンエイジャーではない、年老いていくあなたの姿が見たかった。
 
これからしばらくのあいだ、あなたの生まれ変わりに定期的に会いにいくよ。
画面の中のあなたをとりまく世界は、どんな結末を迎えるのだろう。
スマホや新しいパソコンに囲まれたこの世界を、あなたはどう生き抜くのだろう。
苦しいけれど、またあなたの人生を見届けたいです。

 

さようなら、アッシュ。ありがとう。

Our souls are always with you.

 

  

 

*1:聖川真斗「騎士のKissは雪より優しく」、良曲なので是非。